結ぼれがほどけていくということ

からまるはずもない電化製品やイヤフォンのコードが絡まっているとき、夜中に私のいないところで、それらがこっそり動き回っていたんじゃないかなどと、トイストーリーさながらの物語が一瞬頭をよぎることがあります。とにかく絡まったり、詰まったり、滞ったりは世の常です。

 

ひとたび私たちの体に不調が起きたとき、ネットを見ると、たくさんの情報が目に飛び込んできて、不安に駆り立てられるものです。そんなとき、異常が見つかるまであちらの病院、こちらの病院をはしごして検査をし続ける人が少なくありません。

それもプロセスとして必要なこともあります。大きな病気が隠れていないとも言い切ることは出来ないからです。けれどもし、その挙げ句に異常が見つからず、自律神経失調症と診断されたのであれば、その時は自分の心と体に向き合うチャンスを与えられたのだと、これまでのがむしゃらな生活をあらためる機会として受け止めて頂きたいのです。

 

この症状は人によってとても辛く、精神的にも追い込まれる方がほとんどですから、「そんな悠長なことを言っていられない」とおっしゃるかもしれません。けれど、命を取られる病ではないのです。辛くて辛くてたまらないとしても、その先に必ず絡まったコードがほどけるように、結ぼれがほどけていくのです。

 

体の不調には原因があります。その原因をひもといていかなくては、根本的にいやしは訪れません。「分かってはいるけれど、明日の仕事に支障が出ないよう、睡眠を確保するために眠剤に頼った」「頭痛がひどくて勉強に集中できないから頭痛薬を常用している」「手足は冷えているけれど、アイスを食べずにはいられない」「ストレス発散のためにコンビニのスイーツを毎晩食べてしまう」これらの積もり積もった不摂生、体の声を無視した行為によって、一筋縄ではいかない結ぼれを自ら作り出してしまいます。

 

何らかの自律神経の失調症状があって、それを薬でしばらく抑えることは出来ても、それは健康をツケで支払っていると言っても過言ではありません。本当に必要なのは、体の声を聞いて体の喜ぶ生活習慣をみずからが作り、それを積み重ねていくこと。でも、はじめからそれが一人で出来るのであれば、当院は必要ありません。

 

鍼を受けていると、心地よい響きと共に体の結ぼれ、気の滞りがほどける瞬間があります。また、整体を受けていると施術者との境がなくなり、知らず知らずのうちに緊張が解け、体の芯から緩んでいることに気づきます。

さらに光線療法を受けていると、全身が日だまりの中にあって、起きているのか寝ているのか分からないようなまどろみを感じ、細胞の一つ一つにエネルギーが行き渡るような不思議な感覚を味わうことがあります。

 

それらの、体の芯からほっとする瞬間を重ねて味わうことで、絡み合ったコードのような心と体の結ぼれは、自然にほどけて行くのです。心と体が少しずつ楽になって行くにつれて、新しい良き習慣を一つずつ自分のものにしていく気力が出てきます。そうやってご自分の力で心と体を癒やしていくためのお手伝いをする場所。それが当院なのです。